「心に灯をともす、お茶の再解釈」akari bottled teaが描く豊かなノンアルコール体験の未来
日本酒やワインのように、こだわりを持つ人々に選ばれるノンアルコール飲料はまだ少ない。そうした現状に対しチャレンジをしているのが、ボトルドティーブランド「akari bottled tea」だ。
体質的に飲めない経験、そして不妊治療・妊娠中に味わった”心の豊かさが失われた”感覚。創業者の中根、渡邊の二人が共有する「アルコール以外の選択肢で、人生を豊かにしたい」という切実な願いが、このブランドの核となっている。
今回は、創業者の二人に、ブランドの誕生秘話から、常識にとらわれない独自のこだわり、そして未来のビジョンについて語ってもらった。
創業のきっかけ:色のない世界に灯をともす
「飲めない人」と「飲めなくなった人」が抱いた共通の課題
ブランドの立ち上げは、二人の異なる背景から生まれる、ノンアルコール飲料に対する課題意識が原点だった。

「私は体質的に飲めないのですが、外食がとても好きです。横で旦那がワインを嗜んでいる中で、自分はジンジャーエール。どこかしら不満があったんだと思います」と語るのは、共同創業者の中根。彼女にとっての転機は、海外のノンアルコールペアリングの体験だった。
「現地の食材を使ったノンアルコール飲料が、ワインの人よりもリッチなんじゃないかと思うくらい、素材とミクソロジーの観点で提供されていました。この体験が日本でも広まればいいのに、と思ったのが大きなきっかけです。」
一方、取締役で商品開発を担当する渡邊は、お酒を飲むのが好きだったからこそ、飲めない期間のつらさを痛感した。

「不妊治療、妊娠、出産、授乳で3年ほど飲めなかった期間があったのですが、世界の色がグレーになるくらいつまらなく感じました。いかに自分が、お酒を飲みながら楽しむ時間に心躍っていたかを痛感しました。お酒を飲めない時でも、『また頑張ろう』と思える豊かな体験を届けたいという気持ちが、強い思いとしてあります。」
「akari」に込めた、生産者と未来への願い
ブランド名「akari」は、当初は二人の名前が組み合わされたものだが、その裏にはいくつかの意味が込められている。
「実は、渡邊の息子の名前が、心に火を灯して生きてほしいと願いを込めて『灯』の字を一部使っていて。自分たちも『心に炎を燃やして生きていきたい』という強い気持ちで立ち上げたので、それが偶然リンクしました」
さらに、このブランド名には、「生産者さんに明かりを灯したい」という強い思いが込められている。
かつて大手飲料会社で商品開発に携わっていた渡邊はこう語る。「私はこれまで大量生産の商品を作っていて、個性的な素材が画一的な商品に加工されていく作業にフラストレーションがありました。豊かな体験とは、素材のストーリーや背景を含めて楽しめること。生産者さんに光を当てるものを作りたい、という思いが『akari』に繋がっています。」
ブランドの核心:お茶の「再解釈」と「余白」熱量の高い生産者と「自由な発想」の味作り
akari bottled teaが何よりもこだわるのは、「熱意が伝わる商品であること」。
そのために、現在の商品ラインナップは、作り手の顔が見える単一農園(シングルオリジン)の茶葉を選定している。味わいの奥にある生産者の技術、景色、そして情熱に思いを馳せられる体験を、お客様に届けたいという想いがあるからだ。
そして、お茶の伝統的なイメージを打ち破る「お茶の再解釈」こそが、味作りの根幹である。
中根は「私たちの世代よりも下の世代が、格式高い世界に少し距離を感じ、お茶離れが進む現状があります。でも、お茶にはアロマ効果があり、心を落ち着かせてくれる力がある。これを未来に残すには、お茶の再解釈が絶対必要だと思っています。」と語る。
その発想は自由だ。例えば、あえて日本産のウーロン茶にフォーカスしたり、ほうじ茶をスパークリングにしたりと、遊び心を取り入れながらも、味作りは大手飲料メーカーで培った経験から「真面目に」徹底的に行うのがakari流だ。
料理に寄り添い、邪魔をしない「余白」の魅力
akari bottled teaは、主に高級レストランやガストロノミーで使用されることを想定している。この世界観で評価されているのが、「甘くなく、主張しすぎない」という点だ。
渡邊「料理が主役で、飲み物はそれに寄り添う存在というのがシェフの目指すところ。甘くないけれど、ちょっと驚きがある。その余白がお茶の魅力であり、シェフにとっては非常に使いやすいと言ってもらっています。」
また、スパークリングなど新しい楽しみ方を提案することで、飲食店側もお客様に「驚きと好奇心を満たす体験」を提供できると、高く評価されている。
ボトルを彩る、諦めない女性の「衝動的な心」
現在のボトルデザインは、アーティストの北本ちなみ氏の作品を採用している。

「彼女が第二子を出産後、衝動的に『心から絵が描きたい』と思って描いた、感情が爆発した絵だと聞きました。子育てしながらも自分のやりたいことを諦めずに活動されている彼女を応援したいという気持ちもあって、お声がけさせてもらいました。」
ブランドの根底にある、「心が豊かになる体験を諦めない」という創業者二人の想いが、ボトルの視覚的な魅力にも投影されている。
チームワークと未来のビジョン 苦労を乗り越えた「妥協しない」決断
創業初期の苦労として語られたのは、商品開発の難しさだった。

「試作段階で非常に美味しかった緑茶とライムのブレンドが、ボトリングに落とし込んだ時に味が全然違ってしまい、商品のバランスが崩壊してしまいました。机上の理論とプロダクトの違いを目の当たりにした、大きな打撃でした。」
しかし、この時に二人が下した「妥協しない」決断こそが、現在のプロダクトに繋がっている。
「ビタミンCや添加物でバランスを取る道もありましたが、それでは大手の飲料の方が美味しい。やる意味がないと思いました。自分たちが納得いく味にフォーカスし、小規模でも私たちが届けたいレストランに届けるという戦略を貫けたことが、良かったのかもしれません。」
共鳴する価値観
何よりも重要なのは、「美味しいと感じるポイント、面白いと感じるポイントが一緒」であること。
「これだけ、同じ熱量で飲料に対して一緒に起業できる人は、他にいない。一人ではできなかったからこそ、根本に感謝があります。」
目指すは「お茶の新政」
akari bottled teaが最終的に目指す存在とは、「日本酒の新政さんや、ワインのケンゾーさん」のように、こだわりを持った人々に選ばれるようなリーディングブランドに、ノンアルコールの文脈においてなることだ。
渡邊「生産者や素材に興味がある人に飲んでもらえる飲料のプロダクトになっていきたい。お茶が好きじゃない方も、akariをきっかけに、その魅力を知って日常にお茶が入ってくる世界観ができたら、これほどありがたいことはありません。」
味作りでは、これからも個性的なアイデアを追求し、例えばアジア圏の茶葉をブレンドすることで、お茶の魅力を立体的に引き出すなど、「再解釈」をさらに突き詰めていきたいと語る。
akari bottled teaは、単なる代替飲料ではなく、その土地の風景や作り手の思い、そして新しい発想をボトルに閉じ込めた、「心の豊かさを提供する」一本なのだ。
結びに
「お茶というものは、土地の味、土の味が出るもの」。

この言葉に、akari bottled teaの思想が集約されている。二人の熱い想いが、一本のボトルを通じて、飲む人の心に確かな「灯り」をともし、飲食体験をより深く、豊かなものに変えていく。